甲賀消防本部は何をした?
3年が経過し、5類に引き下げられた現在でも、日本は未だに収束の兆しを見せない「コロナ禍」という状況にあります。
そんな中、滋賀県の甲賀広域行政組合消防本部が、過去にコロナワクチン未接種者に対し「差別」ともとれる業務対応をしていたことを各メディアが報じています。
以下は、2023年5月31日付けの毎日新聞の記事内容になります。
コロナワクチン未接種「拒否者」扱い廊下脇に 元消防職員「差別」
滋賀県の甲賀広域行政組合消防本部(甲賀市)が2021年、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けなかった30代の女性職員に対し、感染防止対策として他の職員から離れた廊下脇で業務をさせていたことが、毎日新聞の取材で明らかになった。「ワクチン接種拒否者」として全職員との接触を制限し、その旨を全職員に文書を通じて知らせていた。職員はその後退職を余儀なくされたといい、「ワクチン接種をしない職員に対する見せしめで差別ではないか」と心情を語った。元職員は同消防本部警防課で勤務していた21年4月、職員を対象としたワクチン接種の日程を告げられた。インフルエンザのワクチン接種で副反応が出たことがあり、上司に接種しない意向を伝えた。「強制ではない」とされながらも次の接種日程を告げられるなど、日々重圧を感じたという。 消防本部は5月1日から、警防課と同じ階の廊下脇にある協議スペースの机で勤務することを元職員に求めた。元職員は更衣室の使用も制限され、現場への出動時以外は私服での勤務を余儀なくされた。職場内での行動を記録して提出することも求められたという。消防本部は13日に「ワクチン接種拒否者への業務区別」とする消防長名の内部文書を作成。元職員の名前は記していないが、「警防課員」を対象職員とした上で、全職員や来庁者などとの接触制限を各所属長に求めた。元職員の執務場所や業務内容なども盛り込んだ上で全職員(約200人)に回覧していた。当時は緊急事態宣言が各地で発令されるなど、新型コロナの感染者が急増していた。消防本部によると、ワクチン接種の有無で一定の区別が必要との助言を顧問弁護士から受け、接種していない職員との不必要な接触を避けるためだったという。また、業務区別についても元職員から同意を得ており、適切な対応だったと説明。本田修二・消防長は「『接種拒否者』という文言は、今思えば配慮が足りなかったかもしれない。ただ、当時はウイルスについて未知の部分も多く、ワクチンを接種しない職員への対応の判断が難しかった」と話す。
「業務区別」耐えられず退職
一方、元職員は「(業務区別に)同意しないと職場にいさせてもらえないと感じた。警防課に行くのも気を使い、人目に付く場所で一人で仕事をするのがつらかった」と話す。一連の対応に耐えられず、約4カ月後の8月末に退職したが、最後まで「業務区別」は続いたという。文書を目にした別の職員は「元職員が可哀そうだったが、本部の陰湿な体質が怖くて何も言えなかった」と取材に答えた。 その後、消防本部に対応を疑問視する投書があり、22年12月に顧問弁護士や本部の幹部らが内部で検証したが、問題はなかったと結論づけた。一方、23年5月に総務省消防庁からも問い合わせがあり、再度検証するとしている。【村瀬優子】
自己決定権制約されてはならない
日弁連人権擁護委員会の前委員長・川上詩朗弁護士(東京弁護士会)の話 ワクチン接種の自己決定権という極めて重要な人権が制約されてはならない。感染防止のためでも手段の正当性が問われ、未接種者が不利益を被るような扱いをすべきではない。未接種者を周知することは差別を生む危険性があり、ワクチン接種を悩んでいる人の選択肢も狭めてしまう。今回の対応が適切だったのか、改めて検証する必要がある。未知の感染症が発生した時こそ、冷静な対応や人権への十分な配慮が求められる。
━毎日新聞より引用
という記事内容。
これを受け、同6月2日に甲賀消防本部が会見を行なっています。
その記事がこちら↓
ワクチン辞退者隔離 消防本部「要請は必要だった」 再検証の方針
幹部らが2日、同本部で報道陣の取材に応じ、今月中旬にも対応を再検証する委員会を開く方針を示した。
委員は消防本部の幹部らが務めるとし、委員会の公平性を疑問視する声が上がった。
問題を巡っては、副反応への不安からワクチン接種を受けなかった警防課の職員に対し、本部が全職員との接触を制限。更に「ワクチン接種拒否者への業務区別」と題する文書を作り、職員の執務場所を廊下脇の協議スペースとし、行動を記録させていることなどを全職員に周知していた。職員はこうした扱いに耐えられず、約4カ月後に退職した。
この日、本部で報道陣の取材に対応した西澤卓也次長らは「消防力を維持するため、感染予防策として職員への要請は必要だったと判断している」との本田修二消防長のコメントを発表。一方で「再検証し、結果に基づき適切に対応していく」とした。
そのうえで西澤次長は、22年12月に匿名の投書を受け、本部の幹部や顧問弁護士らによる委員会で対応を検証したが、問題はなかったと結論付けたと説明。
当時のメンバー5人と、滋賀弁護士会から推薦を受けた弁護士と市民代表の計7人で再検証するとした。しかし、報道陣から委員を一新すべきではないかとの質問があり、再度検討するとした。
一方、説明の中で、本部が元職員を他の職員と共に新型コロナ患者の移送業務に携わらせていたことが判明。感染防止の名目で業務区別をしていることとの整合性を問われた西澤次長は「本人の強い要望があった」と説明したが、元職員は毎日新聞の取材に「移送業務は区別しないことに違和感を覚え、上司に確認したが、出動するように言われた。強く要望したわけではない」と話した。
また、持病を理由に接種をしていなかった通信指令課の職員に対しては業務区別をしていなかったことも明らかになった。西澤次長は「部外者の出入りがなく、警防課よりも空間が広いため」と釈明した。【村瀬優子】
━毎日新聞より引用
という甲賀消防本部の会見記事内容になります。
要約すると、ワクチン未接種の職員を「ワクチン拒否者」として扱い、その後、業務上の制約や社会的な隔離を強いた甲賀消防本部の対応が問題視されているニュース。
差別的な扱いや自己決定権の制約、そして人権への配慮の不足、これに尽きると思います。
甲賀消防本部の初期対応において、顧問弁護士から助言を受けた一方で、他にもさまざまな方法が考えられた可能性があります。
当時の状況や情報、リソースの制約などを考慮しながら、甲賀消防本部が最善の判断を下したということもありますが、国や専門家への助言は求めていなかったのかが気になります。
また、消防本部の会見内容は、残念ながら違和感だらけです。
その違和感は大きく見て3つ。
「消防力を維持するため、感染予防策として職員への業務区別の要請は必要だったと判断している」との本田修二消防長のコメントが出ていましたが、矛盾していることは否めません。
また、文書を目にした別の職員の「元職員が可哀そうだったが、本部の陰湿な体質が怖くて何も言えなかった」というコメントには、何とも言えない闇を感じてしまう。
この少し前に、同じ滋賀県内において、別の消防署では、このような腹立たしいニュースも出ています。
今回の事案を含めて、消防の世界がみなこのような体質なのかと疑われても仕方ありません。
こんな体質だから「差別」を「区別」と言い切れるんだ、と考える人も多くいるのではないでしょうか。
問題当時の社会背景は?
当時は、確かに消防本部の幹部らが言うような「未知のウイルス」の脅威で、世界中がパニックになっていたという社会背景がありました。
21年4月と言えば、緊急事態宣言が出された第4波直前の時期ですね。
このころの日本は、感染者数の急増や重症化するケースの報道が相次ぎ、人々は不安と恐怖に包まれていました。
メディアは日々の感染者数や死亡者数を報道し、病院の収容能力や医療従事者の負担が限界に達していることを伝え、また、専門家の意見や政府の対策に関する情報が入り乱れ、混乱が広がっていた状況。
人々はマスクを着用し、手洗いや消毒を徹底するよう呼びかけられましたが、それでも感染を恐れるあまり、外出を自粛し、イベントや集会の中止が相次ぎます。
スーパーマーケットやドラッグストアではトイレットペーパーや食品が品切れ状態となり、買いだめ騒動も起きていました。
学校は一斉休校となり、オンライン授業が導入され、企業もテレワークや業務の一部停止を実施し、経済活動は大きく落ち込みました。
観光地や飲食業界は大きな打撃を受け、多くの人々が職を失いました。
社会全体が不安と絶望に包まれた時期であり、人々は自身や家族の安全を最優先に考え、生活のあり方に大きな変化を余儀なくされました。
新型コロナウイルスの脅威と社会への影響の大きさを浮き彫りにした時期だったと言えます。
そんな状況下での、元職員に対する「業務区別」という対策は、間違っていなかったというスタンスの甲賀消防本部。
同年5月中旬には、消防庁の要請もあり再検証が行われますが、果たしてどのような検証内容が報告されるのか。
今後いつかまた起こりうる感染症のパンデミックへの指標になることとなるため、結果が気になるところです。
この記事から1ヶ月後…↓↓↓↓↓
滋賀・甲賀消防ワクチン未接種者対応問題のその後の展開↓
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