※道路利用税=走行距離課税で記載しています。
走行距離課税とは?
岸田首相に代わってからというもの、防衛費を含めて増税ブーム到来?みたいな世の中になってきています。
2022年10月末、政府・内閣府の税制調査会は税収の減少に伴う新たな財源に「走行距離課税」の導入を検討課題に挙げました。
EV車やハイブリッドなどの低燃費車が普及、カーシェアリングを利用する人が増えたことによるガソリン消費量の減少で、ガソリン税が減収したことが主な理由になります。
ガソリン税とは、「揮発油税及び地方揮発油税」の総称で、1リットルあたり53.8円徴収されています。
ガソリン税・軽油引取税は道路の補修や維持管理する財源です。(道路特定財源)
今後も引き続きガソリン消費量の減少が予測できるため、その代替となる新しい財源を確保する狙いがあります。
走った距離に応じて課税される「走行距離課税」ですが、元々この税制の仕組みは今のガソリン税に組み込まれているものなのです。
昔、GPSがなかった当時は、走行した距離を正確に調べることが困難だったため、燃料を入れる時点である程度の走行距離を概算する形としてガソリンに税を付帯させ置き換えていた経緯があります。
なので突如降って湧いてきた話ではなく、この仕組みは形は違えど昔から運用されてきた課税方法なのです。
その認識で政治家さんたちが「走行距離課税」という誰もが反感を持つような名前を発したことで世論が荒れてしまったわけです。
ガソリンを必要としないEVはガソリン税とは無縁。
こういったEVは現在でも普通に道路を利用していますが、ガソリンを給油しないので「走行距離課税」は払っていないことになります。
税制調査委員が述べた言葉がこれ ↓
「EVは政策的に普及させるため多額のお金が掛かっている上、重たいので道路への負担が大きい。エンジンがないからといって安い課税水準でいいのか疑問だ。
読売新聞より引用
自民の宮沢税制調査会長が読売のインタビューで述べた言葉がこれ ↓
「どこかでEVからお金を取る税制にしていかなければいけない。」
読売新聞インタビューより引用
なんか品のない言い回し。
今後ガソリンや軽油で走る車が減少し、電動車(EV・HV・PHV・FCV)が増えていくと道路の補修費用がどこからも入ってこなくなります。
この危機感から「走行距離課税」が浮上してきたのです。
ガソリン税を払ってないEVに対して走行距離税を課すべき、という意見。
過去に石油連盟が、将来電動車の普及でガソリン税収が落ち込むことを見越しており2009年にこの案の必要性を提言していました。
それから時を経て2018年の自・公両党による税制改正大網で話が挙がり、さらに4年経った今回また持ち上がってきた流れになっています。
公平性が問われる地域問題
ここで問題になるのが、地方在住者のような道路の利用率が高いユーザーと、都会在住者のように車での移動距離が少ないユーザーとを比較した場合の走行距離の差。
走行距離に応じた税制になれば明らかに地方在住者の負担が大きいです。
そういった理由に加え、脱炭素社会に貢献する電動車普及の足枷になりかねないことに対して、自動車ユーザーや自工会(日本自動車工業会)など多方面から一斉に反発の声が上がっている。
しかしこの考え方では都会在住者の言いぶんも出てくるのではないだろうか?
「道路を頻繁に利用しているのだから道路への負担は我々よりもかけてるでしょう。
ならば多く税金を支払うのは当然では?」と。
あまり利用しないにも関わらず、割に合わない税金を徴収されるのでは都会在住者にとっても不公平と感じてしまうでしょう。
この「不公平」という言葉を考えてみると、ガソリンに走行距離に応じた税を付帯させている「走行距離課税」はガソリンを給油するたびに支払っています。
ならば、ガソリン税が始まった時から地方ユーザーはずっと多く走行距離税を支払っていたことになります。
都会ユーザーよりも地方ユーザーの方がガソリンをたくさん入れることに変わりありません。
地方在住者の言葉を借りるなら既に不公平は始まっていることになります。
強い反感の意思を伝えられてる方が多いですが、ずっと昔から走行する分のガソリンを給油し走行距離税を多く支払ってるのです。
そのぶん多く道路を利用して、そのぶん多く道路に負担をかけていた。
それが果たして本当に不公平なのかどうか。
今までもずっとそうしてきたわけであり、もし1台の自動車にガソリン税と走行距離税の両方を同時に課せられたなら理解できます。
しかし、今回の「走行距離課税」導入の検討においては、EVなどのガソリンを全く使用しない自動車に向けたものであるため、ガソリン車はもちろんHVやPHVなどのガソリン消費量が少ない自動車には該当しないはずです。
自動車を購入する時、維持する時、使用する時全ての場面において税金は掛かってきます。
これ以上税金の種類を増やす行為は非効率過ぎる上、HVやPHVよりもEVを購入する方がよい、と動きに変化してくるはず。
EVばかりが売れてしまうと様々な問題が出てくるのが今の日本の現状。
ユーザーに選択させられる自動車性能の種類は1択であってはならないのです。
結局のところ「走行距離課税」という文言は反感を買いやすいネーミングなので「道路利用税」という名前に変えて意識を別の方向に飛ばそうとしていますね。
走行距離の比較
地方と都会の道路利用距離を比較してみると、地方の年間走行距離の平均が約1万kmに対し東京では約2千km。
およそ5倍の差があります。
公共交通機関の少ない地方在住者にとってみれば、仕事や買い物などの移動手段には自動車を保有し使用すること、それが地方の生活スタイルです。
今や一家に一台ではなく一人に一台と言ってもいいほど自動車は普及しています。(令和4年で約8200万台)
物流業界で見ると年間で10万kmを超える距離を走るトラックは多数あります。
尚且つ2023年4月からは「時間外労働月60時間超割増賃金」が施行され、翌2024年4月には「時間外労働の上限規制」が施行、
こういった「物流2024年問題」を抱えている中で、「別の問題が増えてしまう」と、導入されるのであれば大きな影響が懸念されると運送事業者は言う。
物流2024年問題⇒2024年4月1日以降、働き方改革関連法により自動車運転の業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限され発生する問題の総称
単純に走行距離だけを見てしまうと、地域性によって大きく変わってきます。
業種によっても、車を利用する場合だと死活問題ですね。
ガソリン税撤廃がベスト
新たに走行距離税を導入するとして、今のガソリン税を撤廃にするのか?
それとも電動車(EV)に対してのみ課すのか?、といったところが論点ではないでしょうか。
「2035年までに電動車の新車販売100%を実現する」の目標を掲げる観点から、中長期の税制改革の検討と、そこに至るまでの期間の税制のあり方を検討することが、今回の「自動車関連諸税の見直し検討」の意味であると思われます。
欧州連合(EU)と違い、日本では2035年以降もHEV車(ハイブリッド車)やPHEV車(プラグインハイブリッド車)の販売は継続される予定なので、ガソリン車は無くなってもガソリンは必要です。(トラックについては8トン未満の小型は2040年までに新車販売の電動化比率を100%を目標としている。)
なのでガソリンや軽油を使用するガソリン車やディーゼル車、HV、PHVはガソリン・軽油引取税をそのまま継続し、EV車は走行距離税を課すのが一般的な流れだと思いますが…..。
EV車発売当初から何らかの課税していればまだしも、今更という感じが多いにあります。
国政の方針が2035年までにEV、HV、PHV、FCVなどに限定するのが確実であればガソリン税の撤廃をし、すべての自動車に走行距離税を課すことが一番シンプルで効率性が高いと思います。
「1km走って5円の走行距離税」と言われていますが、燃費を10km/ℓで計算すると今までのガソリン税負担額とさほど変わりません。
地方ユーザーは年間約10,000km走行するので燃費が10㎞/ℓだと年間1,000ℓのガソリンを給油する。53.8円の1,000倍なので年間53,800円のガソリン税を支払っていることになる。走行距離課税だけの場合だと、50,000円。(マイナス3,800円)
ところが、燃費が20km/ℓで計算すると走行距離税課税と2倍ほどの差がでてきます。
地方ユーザーは年間約10,000km走行するので燃費が20㎞/ℓだと年間500ℓのガソリンを給油する。53.8円の500倍なので年間26,900円のガソリン税を支払っていることになる。走行距離課税だけの場合だと、50,000円。(プラス23,100円)
東京在住者であれば全てが5分の1の金額になります。
ガソリン税が撤廃されるとガソリン代金は減るが、低燃費なほど走行距離課税との差が大きくなるため、燃費性能ごとに税単価を下げていくべきだと考えます。
現在、EV以外の自動車の平均燃費は22km/ℓと言われていますが、あくまでも平均であってこれを元に全て同じ税率にするのは問題があります。(EV車の電費(燃費)は1Kwあたり6~7km)
既に環境性能割という減税システムがありますが、その数値を適用すれば問題はありません。
車種に応じて重量や燃費性能を精査し、そこで課税額を決定すれば相対効化が得られるはず。
自動車製造メーカーも走行距離税の額が決まるのであれば燃費性能向上に力が入るというもの。
特にEVはまだ発展途上の段階であるため、バッテリーの重量や電費(燃費)はまだまだ進化するでしょう。
国の検査基準を設定し、走行距離税の設定額を決め、様々な性能税額自動車をユーザーに選択してもらう余地を与えることができれば偏りのない販売ができるのではないでしょうか。
データ改ざん事件の頻発も気になりますが、直接税金が掛かってくるだけあって国の目も国民の目もさらに厳しいものになるはずです。
ひとつの嘘で信用失墜と莫大なお金を失うリスクは選ばないでしょう。
GPS と税の支払い
実際に走った距離の算出方法はGPS機能を利用すれば効率的だと考えます。
スマートフォンを常に持ち歩く感覚と同様の感覚で設置し、使用者のプライバシーの尊重は常に十分に配慮されることは当然です。
国の管理権と、使用者のプライバシー権は、一方が他方に常に優先するわけではなく相互にバランスを保つ必要があるのです。
GPSを使用していれば本体機能の進化が期待でき、さらに便利なモノに変化していく可能性があります。
GPSは日進月歩で進化を遂げており、自動車の中でスマホをかざせば税金を納められるシステムができるかもしれません。
ガソリンの場合だと給油するたびに無意識に支払っている税金ですが、走行距離課税になるとなかなか難しいものがあります。
車検時や5月の自動車税の時に一括納税するのではなく、月に1回程度のペースで納税できる仕組みが構築できれば負担の軽減を図れます。
あまり納税はしたくありませんが、出来ることなら無意識に納税してるくらいがいいですよね。
まとめ
ちなみに運輸業界を見ると、
トラックはディーゼル車なので軽油価格132.1円で(軽油取引税リッターあたり32.1円)燃費を4㎞/ℓで計算。
運輸事業者だと年間100000km走行し燃費を4km/ℓで計算すると年間2500ℓの軽油を給油する。32.1円の2500倍なので年間80,250円の軽油引取税を支払っていることになる。走行距離課税だけの場合、1kmの走行距離税を5円で計算すると、500,000円になる。(プラス42万円くらい)
まあ有り得ないですね。
CO2の排出量の多い国ランクで世界で5番目の位置にある日本。
温室効果ガスの排出削減目標など気候変動対策を評価した国別ランクは60か国中45位と世界的に見れば日本の対策はまだまだ不十分の域にあると言わざるを得ません。
とはいえ、自動車業界では圧倒的ナンバー1の削減率を見せています。
EV車の普及が著しい欧米各国よりも断然に引き離したダントツの1位なんです。
世界的に見ても日本の自動車の性能は本当に優れています。
いつの状況であっても日本の産業を守る姿勢を国に求めたい。
国民(特に若者)のさらなる車離れを後押しするような税策は、日本経済の衰退に繋がります。
もっと柔軟でシンプルかつ、新しい発想と駆け引きのない形で取り組んで頂きたいと思っています。
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