水素に強み川崎重工
世界の脱炭素社会に向けた動きが活発化している中で、日本、欧米、中国が国家戦略に組み込むなど、いま最も注目されているのが、CO2を排出しない次世代クリーンエネルギーの「水素」。
この水素を、作る→運ぶ→貯める→使うなどの、サプライチェーン全体に大きな強みを持っているのが日本の「川崎重工業」なのです。
今回は、その川崎重工によって、「未来の水素社会を形成する」すごい話に注目したいと思います。
川崎重工が世界初の挑戦
2022年2月の実証実験で、オーストラリアで製造された水素が神戸港に到着しました。
運んできたのは、世界初の液化水素運搬船、川崎重工の「すいそ ふろんてぃあ」号。
日本初のLNG運搬船建造からすでに40年を越え、液化水素陸上輸送や貯蔵の技術を基に液化水素専用の極低温蓄圧式の貨物格納設備を搭載した液化水素運搬船を建造。

運ばれた水素は、水素燃料電池車(FCV)や、トヨタ自動車が開発を進める水素エンジン自動車に利用するのはもちろんのこと、発電の燃料にも利用されるのです。
政府は、現在の水素利用量約200万tを、2050年には10倍の約2,000万tに増やす目標を掲げていることから、脱炭素社会の実現に向けた期待が非常に大きいことが伺えますね。
川崎重工の橋本社長は、水素がエネルギーの本命になると確信しているそうで、水素についてこのように述べています。
「水素は、世界中のありとあらゆる場所から持って来られる、ありとあらゆるエネルギーから作ることができる、そしてクリーンエネルギーでありながら貯めることができる」
エネルギー安全保障問題の観点からも大きな強みが豊富にあることでその考えに至ったのです。
エネルギー安全保障とは、国民生活、社会経済活動のために、環境への影響を考慮しつつ、必要十分なエネルギーを合理的な価格で継続的に確保すること。
オーストラリア産の超低品質な石炭から水素
現在の社会情勢を見ると、ロシア・ウクライナ問題によって天然ガスのエネルギー不足に世界中が苦しんでいる状況です。
ニュースでもよく取り上げられていますが、エネルギー価格の高騰が想像を超えるものになっています。
天然ガスや石油などのエネルギーを他国に依存してしまうのは、外交上弱い立場になってしまうのです。
そういった弱い立場の国が外交戦略に失敗してしまえば、韓国のように高い値段でエネルギーを購入しなければなりません。

韓国政府は国民から非難・罵倒の嵐にあってました。
資源の乏しい日本にとっても同様の話ですが、そのあたりの外交戦略は見事な位上手く立ち回ってくれています。
なので、有事の時はその差が浮き彫りになってきますね。
さて、日本が水素社会を実現するメリットは、計り知れないものになることは間違いありません。
そのため川崎重工は、早くから水素が本命だと見定めて様々な実証実験を行っているのです。
水素も同様、他国であるオーストラリアに依存しているのですが、

オーストラリアから輸入しなくても、日本で作ればいいんじゃないの?
先述したように「あらゆるエネルギーで水素を作れる」のだから「輸入なんかせずに日本で作ればいいじゃない!」と思われますが、現段階の技術では水を電気分解するコストを考えると、輸入する方がはるかに安価なのです。
国内の至るところで水素が作られるようになり、価格が抑えられるようになるまでは他国に依存する形がベストなのです。
では、なぜ現段階では輸入する方が安価なのか?
実は、日本とオーストラリアで構築したサプライチェーンは褐炭から作られた水素でプロジェクトを進めているからです。
褐炭とは、水分や不純物などを多く含む品質の低い石炭のことをいい、輸送効率や発電効率が低く、乾燥すると自然発火するおそれもあるため、採掘しても近くの火力発電所でしか利用できない使い勝手の悪い安価なエネルギー資源です。
しかも、オーストラリアのビクトリア州で採掘される褐炭は、重量の約60%が水分で国際的にも取引されていない最も低品質な石炭なので、オーストラリア政府も利用価値に悩む状況だったのです。
この褐炭から水素を取り出す技術は非常に難しいとされてきましたが、技術者たちのたゆまぬ努力が実って成功してしまったのです。
さらに、水素に含むガスから二酸化炭素や窒素といった不純物を取り除くことによって、純度「99.9996%」の水素を作ることに成功してしまいました。
これには、非常に高い技術が必要とのことなのです。
そして、その水素を輸送するには液化して−253℃にする必要があるのですが、長距離の海上輸送は技術的に難しいため、実用化できないと思われていました。
しかし、またもや川崎重工は、見事これをやってのけてしまったのです。
これはオーストラリア政府にとっても、中国以外に安定してエネルギー資源を輸出できる国が増えるということで、大きなメリットになります。
そして、この埋蔵する褐炭の量は日本のエネルギー需要240年分に相当するとされており、日本のエネルギーの安定供給を確保する上でも重要な役割を果たすものと期待されています。
水素エネルギーの課題:低コスト化
天然ガスの時にも今と同じく、高価すぎるエネルギーを輸入して「いったい誰が使うんだ」という懸念を抱く方が多かったのです。
にも関わらず、先述したLNG運搬船を建造し、大量に運ぶことでこれを解決に導いているのです。
今回の水素についても同様で、一気に大量に運ぶ技術と水素を液化する技術、−253℃に保つ技術と長距離輸送に耐えうる貯蔵タンク強度の技術が兼ね備わることで低コストを実現することに成功しています。
特にこの船の技術で凄いところはタンクの部分で、電気を使わずに−253℃を長期間維持できる真空断熱技術が使われているところにあります。
これは、100℃のお湯を1ヶ月間放置していても99℃までに保てるという、超進化系魔法瓶のようなものです。
川崎重工さんあっぱれです!
LNGより100℃近く低温のため、気化しやすい液化水素。
その液化水素を保持するための断熱性能と、太平洋の荒波を越えていく強度を両立させることに成功しているのです。
凄いですね♪
水素は今現在、nm3(ノルマルリューベ)あたりでおよそ170円かかっており、そのうち89円が運搬コストなんです。
半分以上が運搬コストなんですね。
この運搬コストを商用化した際の大型液化水素運搬船を使えば、たったの3円台に抑えられるというのです!
さらに、複数の大型運搬船を用いることで2円台にまで引き下げることが可能になるとのこと!
もちろん運搬後のコストも今後の技術革新と需要創出により、さらに価格は下がっていくと見込まれ、2030年代には現在の170円から30円台程度にできるという見通しとなっています。
そうすれば、オーストラリアと言わず世界中のどこからでも輸入することができるのです。
実は今、この「すいそ ふろんてぃあ」の130倍、一度に10,000tの液化水素を運べる大型液化水素運搬船の開発が進められているのです。
「すいそ ふろんてぃあ」で、75tの液化水素を運ぶことができ、自動車の燃料として使うと1万5000台分を満タンにすることができるのですが、この130倍となると、いかにすごい数字かよく分かりますよね。
掛けてみて下さい♪

当然、この水素運搬船の動力エネルギーは「水素」です。
船を大型化することで、さらに運搬コストを下げられ、より大量に安価な水素エネルギーを運んでくることができるのです。
川崎重工は、ロケットの液化水素燃料のシステムを提供し続けており、そうして蓄積された技術と設備と方法を見事に活かしているというわけです。
まとめ
次世代のクリーンエネルギーである「水素」の活用に向けて、川崎重工は本気で取り組んでいることが分かります。
神戸ポートアイランドに水素発電所があり、オーストラリアから運ばれた水素を使って、実際に発電する実証実験が行われています。
市民病院や下水処理施設といったところで、このエネルギーは使用されました。
普段私たちが使用している電気と何ら変わりはないのですが、発電する時に二酸化炭素を排出しないので、知らず知らずのうちに私たちの生活がクリーンになっていくのです。
このように、水素に関して作る→運ぶ→貯める→使う、というあらゆる部分までカバーしている企業は、世界に目を向けても存在しておらず、世界中に広いサプライチェーンを築いていくことで、2050年には2兆円規模の事業に展開していくこととしています。
環境問題と安全保障問題を同時に解決できる可能性ができ、いよいよ近い未来に水素社会が訪れる気配が漂ってきましたね♪

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