はじめに
SDGsやカーボンニュートラルなど、脱炭素社会に向けた環境対策の取り組みの活発度が増しています。
自動車業界においても同様でCO₂を排出する内燃機関に代わり、モーターで駆動し走行時にCO₂を排出しない電気自動車の普及も進んでいます。
今後、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の活用も検討される中で、環境面から見た電気自動車と特徴や仕組み、メリットやデメリットについて詳しく紹介していきます。
LCA…自動車の原材料の調達から廃車に至るまでの全ての工程で発生するCO₂排出量を評価する手法
電気自動車とは?
電気自動車は、英語でBEV(Battery Electric Vehicles)で、バッテリー・エレクトリック・ビークルと読みます。(電池・電気の・乗物)
電気自動車(BEV)は、内燃機関(エンジン)やその他動力源を搭載せず、バッテリーのみで駆動するのが大きな特徴で、化石燃料は不要であるため燃焼に伴うCO₂の排出が全くありません。
一般的にはBEVをEV(電気自動車)として表現されることもあります。
内部構造の違いを詳しく見ると、電気自動車の構造は主に3点に分かれており、
①「バッテリー」
ガソリンエンジン車でいうところのガソリンタンクにあたります。
電気自動車の動力源「電気」を蓄えるのがバッテリーの役割です。
②「モーター」
ガソリンエンジン車でいうところのエンジンにあたります。
モーターは、電気を回転力へ変換する役割を担っています。
③「コントローラー」
ガソリンエンジン車でいうところの燃料ポンプなどの調整部品と同じ役割を担っています。
電気の直流・交流変換や電流制御など部品やシステムを組み合わせた装置で、バッテリーとモーター間で調整を行います。
その他の電動車
燃料電池自動車(FCV)
燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle)とは、燃料電池の電気でモーターを駆動させる自動車のことです。
EVに搭載されるバッテリーと異なります。
燃料電池は、水素と酸素の化学反応で電気を発生させるのが特徴でCO₂の排出量はありません。
現在日本で生産販売しているFCVは、トヨタの「ミライ」がありますが、ホンダや日産でも過去に生産していました。
ホンダの「クラリティFUEL CELL」はオーダー受付が終了しており、日産は「エクストレイルFCV」を開発し公道実験などを行っていましたが、市販化には至っていません。
ハイブリッド自動車(HV)
ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle)は、2種類以上のエネルギーを活用した自動車を指しており、モーターとエンジンを動力源としていて3種類の運用方式に分かれているのが特徴です。
・パラレル方式
走行時はエンジンが主体となり、モーターはサポートに徹するのが特徴。
エンジンに負荷がかかる発進、加速時にモーターを駆動させることにより燃料の消費を抑えることができます。
このパラレル方式は、スバルXVの「e-BOXER」や、ホンダフリードの「SPORT HYBRID i-DCD」などに採用されています。
・シリーズ方式
エンジンで発電した電力をバッテリーに蓄積し、その電力でモーターを駆動し自動車を動かします。
エンジンはバッテリーへの蓄電のみに使い、完全にモーターだけの駆動のため、その部分においてはEVと変わりません。
このシリーズ方式は、日産ノートやセレナなどの「e-POWER」に該当します。
・スプリット方式
スプリット方式は走行状態により、エンジンとモーターを適切に使い分けることからシリーズ・パラレル方式とも呼ばれています。
発進、低速時にはモーターのみで走行し、高負荷時や高速走行時にはエンジンも始動させるシステムです。
このスプリット方式はトヨタ「プリウス」に採用されており、主軸のハイブリッドシステムとして使われ続けています。
プラグインハイブリッド自動車(PHV)
プラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Vehicle)は、ハイブリッド自動車と同じくガソリンと電気を活用した自動車です。
コンセントから差し込みプラグを用い、外部電源から直接バッテリーに充電することができるハイブリッド自動車です。
走行時にCO₂や排ガスを出さないEVのメリットと、必要に応じてモーターとエンジンを併用し駆動できるハイブリッド自動車の長所を持ち合わせています。
代表的なPHV自動車は、トヨタ「プリウスPHV」や三菱「アウトランダーPHEV」などがあります。
電気自動車のメリット
電気を燃料とするEVには様々なメリットがあります。
ここではガソリン自動車ではなくEVに乗るメリットについて見ていきましょう。
走行時のCO₂排出量ゼロ
EVはガソリン自動車と異なり、電気を燃料として走行するため排気ガスを排出しません。
そのため、排気ガスに含まれる環境汚染物質が排出されず環境に優しい自動車です。
日本では2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指しており、排気ガスゼロのEVは実現に向けた重要な要素と言えるでしょう。
走行時の騒音や振動が少ない
従来のガソリン自動車は、ガソリンを燃焼させてエンジンを駆動させているため、エンジンが動く駆動音や駆動する際の振動が生じてしまいます。
それに対しEVはモーターを駆動させて走行するため、走行中の騒音や振動が少なくなっています。
ガソリン自動車の騒音が気になる方にとってEVの静音性は快適に感じられるでしょう。
走行コストが安い
EVはガソリン自動車に比べて走行コストが安いこともメリットのひとつです。
ガソリン自動車とは異なり、EVの燃料は電気のみであるため、ガソリン代が掛かりません。
両自動車が同じ距離を走行した場合、一般的にガソリン代よりも電気代のほうが安くなります。
さらにEVは自宅で充電できるため、契約している電気代プランによっては安い時間帯に充電し、コストパフォーマンスを高めることも可能です。
さらには、太陽光発電や蓄電池、V2H(充放電器)の設置により、効率的に電気を活用することも可能になります。
非常用電源として活用可能
電気自動車は、いざという時に非常用電源として活用できます。
万が一地震や台風、豪雨被害を受けた場合など何日も停電してしまうことがあります。
そのため蓄電池やV2Hがあれば、EVの電気を家庭内に流用することができます。
電気自動車のデメリット
続いて、電気自動車の導入や特性に関するデメリットについて見ていきましょう。
販売価格が高い
電気自動車は、ガソリンエンジン自動車と比較して販売価格が高いという点があります。
電気自動車(普通自動車)の販売価格は300万円台から設定されており、中古市場でもさほど出回っていません。
また、リセールバリューも決して良い方ではありません。
新車の相場価格は、300万〜600万円前後の一般的な価格帯と、1,000万円以上のハイクラスな価格帯に分かれています。
一般的な価格帯に属する車種は、日産リーフやマツダMX-30、ホンダHonda eなどがあります。
ハイクラスの価格帯に属する車種は、ポルシェタイカンやテスラモデルSなどがあります。
その中間に700万円前後の価格帯があり日産アリアやメルセデス・ベンツEQA、トヨタbZ4Xなどがあります。
充電時間の長さ
電気自動車のデメリットのひとつに長い充電時間が挙げられます。
ガソリン自動車の給油時間3分程度に対して、電気自動車は普通充電で10時間以上、急速充電でも40分以上かかります。
最近では中国の高速道路で電気自動車が充電待ちの大行列を作り、途中でバッテリー切れになった電気自動車がたくさんレッカー移動される報道もされていました。
充電ステーションの普及
電気自動車の充電スタンドは、ガソリンスタンドの6割程度と設置はまだまだ進んでいないため、増設されるまでは不便な状況が続いています。
充電スタンドの少ない地域では、いざという時に充電ができないため、常に余裕のある充電状況を保つことなどを考えて行動しなければならないという点があります。
航続距離
電気自動車は日々進歩しているものの、ガソリンエンジン車と比較して航続距離に課題があります。
ガソリンエンジン車の航続距離600〜1,500kmに対して、EVは満充電の状態でも200〜500kmとガソリンエンジン車より短い航続距離となっています。
街乗りユーザーのための短距離に特化した軽EVを除いても航続距離ではまだ劣っている状態です。
バッテリー
充電の使用方法によっては、著しく性能が低下するおそれがあります。
ガソリン車に比べて自動車自体の寿命は短いと言えます。
素材にレアメタルを使用していることで資源の枯渇や高騰、また廃車時に適切な処理を行わないと有害物質が垂れ流れ人体に影響を及ぼすおそれがあります。
まとめ
電気で走る自動車EVは、CO₂を排出しないエコカーと言われています。
ガソリンと比べ燃料代が安い上、振動が減り静かに走行できることから、環境やユーザーにとって優しい自動車とも言われています。
とはいえ、冒頭で述べたLCAの面で考えるとガソリン車を製造するよりも多くのCO2を排出しているのです。
EVを10年乗り続けて、初めてガソリン車に追いつくであろう、という見解もあるため、一概に「エコカー」とは言い難い部分があります。
現時点では、メリットよりもデメリットの方が多いという点と、「EV=エコカー」に対するエビデンスが不足している状況です。
しかし、進化する可能性は遥かにEVの方に分があるでしょう。
各国の再エネに向けた投資額がそれを物語っています。
今後は、環境意識の高まりとともにEVの普及は拡大されることが予想されますが、購入するのであれば、
利便性を追求し蓄電池・V2Hなどの設備にも目を向けたいところです。(補助金あり)
購入に際して国からのCEV(クリーンエネルギー自動車)補助金は最大85万まで支給され、地域によっては自治体からも補助金が支給されます。
地域性や利用頻度によって大きくメリットが変わるEV。
今の自分の生活環境にマッチした自動車なのか、購入のタイミングもよくよく考えて決めていきたいですね♪
〜これが真実!騙されないで下さい!
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