源は「水素」にあり
気候変動問題への懸念が高まり、地球温暖化対策として「カーボンニュートラル」に向けた対策が各国で取り組まれている中、日本も国際社会に対し責任ある貢献が求められています。
脱炭素社会に向けたエネルギーシステムの改革は、世界各国の悲願であり様々な研究が進められています。
先ごろ米国でクリーンエネルギーを無限に得られる可能性がある「核融合発電」の実験において「画期的進歩」があったと発表されました。
これは太陽で起きているような核融合反応を人工的に作り出し、そこから発生する熱エネルギーを利用して電気を作る、いわゆる「地球に太陽をつくる」という研究になります。

地球に太陽って!?
1985年に米ソが協力して核融合を実験しようと合意したのが発端で、現在では日本、EU、ロシア、米国、韓国、中国、インドが連携し、ITER(イーター : 国際熱核融合実験炉)の建設がフランスで進められています。
2025年の運用開始を目指していますが、実用化についてはまだ先のようです。
実用化できたら、エネルギーを無限に手に入れることができるので超画期的ですね♪
核融合反応とは、水素(H)などの軽い原子の原子核同士が衝突・融合してヘリウム(He)などのより重い原子核に変わることを言い、核融合の際には非常に大きなエネルギーが発生します。
太陽が常に燃えたぎっているのは、核融合反応を起こし膨大な熱や光を出し続けているためであって、その中心部の温度はなんと1,500万℃!! さらに2,000億気圧という巨大な圧力がかかっている状態といいます。
その熱や光は、遥か1億4960万km先の地球にまで届き、
その太陽の恩恵に預かって、私たちは生きているのです。
その源はまさに「水素」!
「水素」なくして膨大なエネルギーは発生しません。
将来的にこの「水素」を安全かつ効率的に活用できるのであれば、この上ないエネルギー資源になるでしょう。

来たるべき「水素社会」に向けて、改めて水素とは何か? に注目していきたいと思います。
水素について

クリーンかつ汎用性の高いエネルギーとして「水素」に大きな期待が寄せられています。
ここでは、水素とはどんな物性や特徴を持っているのかについて解説していきます。
水素の物性とは?
皆さんも化学の分野で、「水兵リーベ僕の船………」という語呂合わせで、元素記号を暗記した記憶があると思います。
水素の原子番号は1番で、元素の周期表にも1番目に出てきてましたよね。
水素原子は原子核に陽子が1個で、その周りを回る電子も1個で構成されており、全ての元素の中で最も単純な構造をしています。
地球上に水素分子の状態で存在することはほとんどありませんが、水や他の元素との化合物としては大量に存在しています。
それは主に海水などの化合物の状態で存在しており、水を電気分解すれば水素と酸素を取り出すことができるのです。
水さえ豊富にあれば水素も豊富にあるということですので、「水の星」と言われるこの地球において「水素」は無限に近い質量を持っていることになります。
また、宇宙全体で見ても最も豊富に存在している元素であり、質量では宇宙全体の約70%を占めると言われています。
太陽を始めとした、宇宙の恒星のほとんどが水素の核融合反応によって光っているのです。
水素は無色で無味、無臭の気体で、空気に対する比重は0.0695で最も軽い気体、素早く拡散する特性を持っています。
沸点は−253℃で、水素を液化するには−253℃まで冷却する必要があり、発火点を見るとガソリンの300℃に対し、水素は527℃なので自然発火しにくいガスと言えます。
水素の最も注目すべき特性として、燃焼しても二酸化炭素(CO₂)などの大気汚染物質を全く排出せずに空気中の酸素(O)と反応して水(H₂O)になるというクリーンなエネルギーであることが挙げられます。
水素エネルギーの特徴
燃焼しても水に戻るだけのクリーンエネルギーである点だけでなく、様々な特徴を持つことが挙げられます。
先述したように、水素エネルギーは枯渇する心配がないこと。
さらに宇宙ロケットの燃料に使われるほど、エネルギーとして非常に大きなパワーを持っていること。
また、大容量電力の長期貯蔵など2次エネルギーとして色々な用途に使うこと、などが挙げられます。
再生可能エネルギーなどの安価な資源から水素を作れば、エネルギーコストを抑制しながらエネルギーとその調達先の多角化に繋げることができ、エネルギー安全保障に役立ちます。
- 最も軽い気体
- 拡散が早い
- 自然発火しにくい
- 無味・無臭・無色
- 液化水素は極低温
- 火災温度が2,000℃と高い
- 火災が見えない
- 燃えてもCO₂やSOₓがでない。
岩谷産業「水素エネルギーハンドブック」より
水素エネルギーの利用
水素エネルギーの利用は、燃料電池で電力を作り出す方法と、水素を燃やして使う方法の2つに分けられます。
燃料電池で電力を作り出す方法としては、エネファームや純水素型燃料電池コージェネなどの定置用燃料電池システム、および燃料電池車(FCV)、FCバス、FCフォークリフトなどが挙げられます。
FCVなどのモビリティでは、燃料電池で作った電気が動力源になります。

トヨタ自動車の「ミライ」はまさにそれ。
水素を燃やして使う方法としては、水素発電が挙げられます。
水素発電では、水素を燃焼させた熱エネルギーを使って大型タービンを回し発電を行います。
現在、水素と他の燃料ガスとを混合して発電する混焼発電について実証が進められています。
また、水素のみで発電する専焼発電の技術開発も進められています。
現在の水素の用途
- 半導体
- 太陽光パネル
- ガラス・光ファイバー
- 電子部品
- ロケット燃料
- 金属冶金
- アンモニア製造
- 石油精製・化学
- 製鉄所
将来需要増が期待される水素
- 純水素型燃料電池コージェネ
- FCバス・トラック
- 発電
- FCV
- FCフォークリフト
岩谷産業「水素エネルギーハンドブック」より

水素は多くの産業用途で利用されています。
水素の作り方

水素をエネルギーとして活用するには、人工的かつ大量に作り出す必要があります。
ここでは、主な水素の製造方法について解説します。
化石燃料から製造
石油(ガソリン、灯油、ナフサ)や天然ガスといった化石燃料から水素を製造する方法としては、水蒸気改質法や部分酸化改質法などのプロセスが実用化されています。
日本では経済性の観点から、ナフサの水蒸気改質法が主流となっています。
ナフサとは、原油を常圧蒸留装置によって蒸留分離して得られる製品のうち沸点範囲がおおむね30 – 180℃程度の炭化水素混合物です。粗製ガソリン、直留ガソリンなどとも呼ばれます。主に炭素数C8からC10の範囲の芳香族炭化水素からなっています。
水蒸気改質法では、化石燃料から水素と一酸化炭素を発生させ、さらにシフト反応により一酸化炭素と水蒸気から水素を発生させる二段階のプロセスとなっています。
得られた粗水素を圧力スイング吸着、膜分離などのプロセスで精製し、高純度の水素を製造します。
工業プロセスの副産物
ソーダ工業における食塩水の電解プロセス、製鉄所におけるコークスの製造プロセス、製油所における石油精製プロセス、石油化学におけるエチレンの製造プロセスなどの工業プロセスから、副次的に水素が得られます。
これらの副生水素は、主に工場内の他のプロセスの原料やエネルギー源として利用されています。
水の電気分解
水を電気分解することで水素が得られます。
水電解で得られる水素は純度が高いという特長がありますが、電力が必要となります。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーから作った電気を使用すれば、CO2フリーで水素を製造することができます。
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水素エネルギーの活用
電気や熱に加えて将来の2次エネルギーとして中心的な役割を担うことが期待されているのが「水素」です。
水素をエネルギーとして活用することによりエネルギーセキュリティの向上やCO2の排出削減に繋げることができます。
将来有望な2次エネルギー
第5次エネルギー基本計画では、2030年に向けた基本的な方針と政策対応の中で、エネルギー政策の基本的な視点(3E+S)を示しています。
それによれば「エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency )による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取り組みを行うことにある」としています。
このようなエネルギー政策の基本的な視点に沿うのが水素エネルギーの活用です。
水素は多様なエネルギー源から製造が可能であることに加え、利用段階においてCO2の排出がありません。
したがって水素は、エネルギーの安定供給や環境への適合に貢献できる将来有望な2次エネルギーであると考えられます。
言い換えれば、水素をエネルギーとして活用することで、エネルギーセキュリティの向上や環境負荷の低減に繋げることができます。
また、水素エネルギーの活用を通じて経済効率性の向上を達成できれば、それは日本の水素エネルギー分野における国際的な産業競争力が強化されたことを意味します。
水素利用の方向性
現状日本では、1次エネルギーの90%以上を海外から輸入する化石燃料に依存しています。
このような中、水素エネルギーの利用は日本における1次エネルギーの供給構造を変革・多様化させ、大幅なCO2の排出削減を実現する手段として期待されています。
同時に水素によって化石燃料の一部を代替することは、エネルギーセキュリティの向上にも役立ちます。
なお、原料となる水素の製造にあたっては、CO2の排出を伴わないCO2フリー水素の製造が前提になります。
水素利用の方向性として、電力の部門で見ると、従来の化石燃料を用いた火力発電を、水素を用いた発電に置き換えることで電源の低炭素化を進めることや、再生可能エネルギーの大量導入に伴って必要となる、変動吸収や電力貯蔵のために水素を利用することが挙げられます。
運輸部門で見ると、CO2排出量の大半(85%)を占める乗用車や貨物車の燃料電池自動車への切り替えが挙げられます。
また、鉄鋼や石油精製などの産業部門では、工業プロセスや熱源等において水素の利用を増やすことが挙げられます。
水素の安全性

水素には、爆発しやすいなどの危険なイメージがありますが、ガソリンや天然ガスなどの他の燃料と比較して、水素の危険性が特に高いわけではありません。
水素の性質や特徴を踏まえ、安全に使用するための社会制度を確立することが重要になります。
水素の特性と危険性
他の燃料と比較して水素には燃焼可能濃度範囲が広く、着火しやすいという特性があります。
ただし水素ガスは軽い上、拡散スピードが非常に速いという特性もあるため、仮に4%を超える水素が空気に混ざって燃える気体になったとしても、開放された空間では水素がすぐに上方へ拡散して水素濃度が下がり、引火の危険性は低下します。
また、水素は熱放射が小さいため、仮に水素が燃えたとしても熱放射による被害や燃焼は少なくなります。
総じて、水素と他の燃料と比較して水素の危険性が高いというわけではありません。
ただ燃料である以上、メタン、プロパン、ガソリン等と同様に水素の取り扱いには注意が必要になります。
水素の特性を正しく理解し適切な安全対策を行えば、他の燃料と同じように安全に使用することができます。
なお、日本の都市ガスは、天然ガスが使用されるようになる前の昭和20年代から40年代にかけて、水素と一酸化炭素の混合ガスが使われていました。
このような実績からしても、水素の安全性は既に実証されていると見ることができます。
水素が燃焼・爆発する条件
水素が燃焼・爆発するのは、密閉された空間において水素が大量に漏れ出して水素と空気が燃焼範囲で混ざり合い、そこに火種が存在する、という条件が揃った場合に限られます。
水素使用の安全対策としては、
- 水素を漏らさない
- 漏れた場合は早期に検知し拡大を防ぐ
- 漏れた場合は水素を溜めない
- 漏れた水素に着火させない
以上の4つが挙げられます。
まとめ
日本では、1970年代から水素エネルギーの技術開発が進められてきました。
そして今では、水素の製造、輸送や貯蔵、供給や利用に関する様々な技術が実用化段階に達しています。
今特に注目されている自動車分野で見ると、化石燃料からの脱却で走行時にCO2を排出しない電気自動車(EV)の普及が進められています。
エンジンをなくし、充電されたバッテリーでモーターを駆動させる、極めて単純な構造の自動車が新たに世に拡がりを見せつつあります。
この普及の動きは極端ではあるものの、脱炭素社会、カーボンニュートラルやSDGsなど地球環境に配慮する意識を持てる良いきっかけであることは間違いありません。
化石燃料一辺倒の時代から電池や水素といった自分の地域性や使用パターンに合った自動車を選択する時代に突入しつつあるのです。
またエネルギーにおいても水素や再生可能エネルギーなどで発電することが主流となり、脱炭素社会に向けた新しい開発やビジネスが活発化されていきます。


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