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【独禁法】”優越的地位の濫用調査” 価格転嫁せず!公正取引委員会が13社の企業名を公表

独占禁止法に関わる金色の天秤と木槌 時事ハイライト
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優越的地位の濫用の恐れ

ロシアのウクライナ進攻や円安などを背景に、エネルギーや食料の価格高騰の影響で企業経営が圧迫されやすくなっている経済状況。

そんな中で原燃料費や人件費などコスト上昇分の価格転嫁を下請け企業との間で協議せず価格を据え置いていた、として公正取引委員会は以下13社の社名を公表しました。

2022年12月末の末、年の瀬にヤバい話が浮き彫りにされました。

このうち5社は物流事業者、2社はトヨタ自動車関連の事業者です。

公表された13社

  • 佐川急便
  • 大和物流
  • トランコム
  • 丸和運輸機関
  • 三菱電機ロジスティクス
  • 豊田自動織機
  • デンソー
  • 三協立山
  • ドン・キホーテ
  • JA全農

赤太字=物流事業者 赤字=トヨタ関連

立場の強い発注側が、受注側に対して自発的に価格転換を協議することを求め、

中小企業の経営を安定させ、賃上げや成長投資につなげるための狙いがある、という意味で、公正取引委員会は社名公表に踏み切りました。

こうした行為は独占禁止法の「優越的地位の濫用」に該当する恐れがあるということなのです。

また、転嫁拒否が疑われる事案の発生が多い貨物運送事業金属製品製造業など4業種を重点的に立ち入りしていました。

調査は2021年9月から22年8月で、受注者側の8万社と発注者側の3万社を対象に実施し、取引価格の引き上げ要請に応じなかった企業として受注者側から挙がった企業4573社の上位50社を抽出し立ち入り調査や報告を行っていました。

※この公表は独占禁止法または下請法に違反すること、またはそのおそれを認定したものではありません。

調査期間中に一部で価格転嫁を進めていた事例や、今回の緊急調査の実施等を受けて調査期間後においては受注者との間で価格転嫁を行うための協議の場を設けた事例等、今後は価格交渉の場において明示的に協議していくという方針を示しています。

運送多重下請け構造

今回物流5社が公表されましたが、この業界で問題なのは、運送多重下請け構造という仕組みが未だ解決しないところにあります。

物流業界は荷主企業から依頼される「元請け企業」を頂点としたピラミッド構造になっており、その下に「下請け企業」→「孫請け企業」→とさらに下へと連なっています。

約8万を超える運送事業者の中にはトラックを保有しない取り扱い事業者(水屋)が約1/4を占めていて、依頼情報を得た事業者が別の企業に数%の情報料をハネた上で依頼情報を提供しています。

それが下へ下へと行くたび依頼運賃が下がり、実際に荷物を運ぶ運送会社は「赤字で走る」といった意味不明なことが多く存在しているのです。

この水屋は「帰り荷」を探してくれるというメリットはあるものの、運送業界の多重構造を引き起こす大きな要因になっています。

今回公表された物流5社はそれぞれ裾野が広いピラミッドの頂点にいることで名前がたくさん挙がったと言えますが、運送業の32.8%が価格転嫁の必要性について下請企業との間で協議していないのが実態で、他業種と比較しても突出して割合が高いのです。

2024年問題という課題も

物流2024年問題に関わるトラックのミニカー

働き方改革関連法」の施行が迫る「自動車の運転業務」。

2023年の4月1日からは「月60時間超残業に対する割増賃金率引き上げ」に続き、

翌2024年の4月1日からは「時間外労働の上限規制」が順次施行されます。

物流2024年問題」とは、この施行により様々な問題が生じることを指す言葉。

ワークライフバランスの観点から、運送業界の長時間労働を是正する目的で労働法が改正されたのですが、事業者側は残業を月60時間に抑えつつも今までと同じ業務量をこなさなければなりません。

割増賃金率が引き上げられると、月80時間の時間外労働をしていた場合で、時間単価1,800円で計算すると月に9,000円程度の差が生まれます。

50人のドライバーを抱えていれば、月あたり45万円の人件費が増えてしまうことになってしまいます。

同じ業務量を処理してもこのような結果になるのであれば業務量を減らす他ない状態でしょう。

価格転嫁を適正に行わない限り、施行後は経営の圧迫が限界に達し倒産する中小企業は頻発しかねません。

慢性的な人手不足という問題に対しても頂けない状況に繋がってしまいます。

物流の効率化などで業務負荷の軽減を進める物流業界ですが、適正価格の遵守にもしっかりと目を向けてもらわなければならないでしょう。

もちろん荷主企業と元請け企業の間においての価格転換の問題がありますが、このポジションにいる両企業においては、そういった責任があるはず。

独占禁止法の事例

タクシー事業者による共同の取引拒絶

タクシー事業者の21社は、低額運賃で営業するタクシー会社が共通乗車券事業(タクシーチケット)に参加することを拒んていました。

これは不公正な取引方法の「共同の取引拒絶」にあたるとして、違反行為を行っていたタクシー事業者に対して排除措置命令が下されました。

旅行業者によるカルテル

旅行業者5社は、市立中学校の修学旅行について貸し切りバス代金や宿泊費の額、企画料金の料率や添乗員費用の額の基準を設けることに合意したため、市立中学校からすればどの旅行業者に依頼しても基準以上の費用がかかることになりました。

この行為は市立中学校の修学旅行に関する旅行業務市場の競争を実質的に制限するものです。

調査の結果、「カルテル」(不当な取引制限)にあたるとして、旅行業者に排除措置命令が下されました。

アイスクリーム製造販売業者による再販売価格の拘束

アイスクリーム製造大手のハーゲンダッツは、小売店を巡回し希望小売価格より安く売っている小売店に対し同社の定める希望小売価格で売るように要請していました。

それに応じない小売業者には、商品の出荷を停止したりハーゲンダッツが行っていた店員の派遣を中止したりしていました。

これは不公正な取引方法の「再販売価格の拘束」に該当し、独占禁止法に違反するものとして、その行為をやめるようハーゲンダッツに勧告しています。

まとめ

公正取引委員会とは、独占禁止法を運用することで自由な経済活動が公正に行われるよう企業の違反行為に目を光らせ消費者の利益を守っています。

民主的な国民経済の発達を図ることを目的として設置された内閣府系列の行政機関です。

今回の異例の公表をした背景には、中小企業の経営を安定させ、賃上げや成長投資につなげるための狙いがある、とありましたが、元請企業に対して価格転嫁に対する不信感が6割を超えていたという事実に、何も改善されていないといった印象です。

労働者の休息時間を代償に様々な業務をクリアしてきましたが、働き方改革の施行がそれを拒みます。

働き方改革の施行のタイムリミットが迫る中で、いまだ個を守る企業が多く存在していることに疑問を抱きます。

アナログな時代から全てのことがデジタルでシェアリングする時代に変遷している今こそ、この分野でも個社を繋げ協力のもと現課題解決に取り組んで欲しいと思っています。

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